物理的原理

マイクロ波による加熱と分子中の物理的基本原理についてご説明します。

マイクロ波による加熱と分子中の物理的基本原理についてご説明します。

誘電加熱の一形態としてマイクロ波による加熱は、高周波電界の作用により導電性の低い物質中に熱を発生させることとして理解されています。

マイクロ波で加熱できる物質は、水分子に代表されるように不斉分子構造をもつことが必須条件です。これらの物質の分子は電気双極子を形成しますが、電気双極子は電界の方向に向かおうとする特性があります。(この特性について図1の右側を参照ください。) この配向分極こそがエネルギー発生を司るものなのです。空間電荷分極の補完的メカニズムについての詳細は次項のテーマである「分子中のエネルギー転換」を参照ください。

Molecular oscillations of polatizable substances

Figure 1. 交流電界中での分極可能な物質の分子振動の様子.

分子中のエネルギー転換

交流電界の影響を受ける双極子モーメント(ダイポール分子)は、高周波電界の極性変化に応じて振動します。 分子間摩擦は高周波エネルギーを発生し、このエネルギーはまず吸収されてから熱エネルギーに転換されます。 ベンゼン等対照分子構造からなる物質は、双極子特性がありませんから、高周波電界の中で加熱することはできません。 浮遊するイオンの衝突が抵抗熱を発生します。(図1の左側) 

このイオン間衝突とここで発生する熱エネルギーへの転換により、さらに高周波エネルギーが吸収されます。 一般的には、2450MHzの周波数でほとんど例外なく行われるイオン衝突によるエネルギー転換比率は、ダイポール振動でのエネルギー転換比率より小さいです。 しかし電解質、塩の溶液、ガラスやセラミックは高温領域では例外的に、周波数が低下すると相当な熱の上昇が見られます。おそらくイオン運動によるものと考えられています。