基本的な計算

マイクロ波加熱の基本的計算についてご説明します。

体積中で熱を発生させるために無くてはならない要素は、マイクロ波電場の電界強度、周波数および、マイクロ波電力損失によって表される対象物質の誘電特性です。(式(1)を参照ください。)

P''' = 2π f εO εr '' Ε2 inW / m3

P´´´ = 体積エネルギー密度、単位 W/m3
f = 動作周波数、単位 Hertz
εo = 自由空間の誘電率 = 8.85 x 10-12 AS/Vm
ε r´´ = 誘電損失要素 = 複素誘電率の虚数部分
Ε = 電界の強さ、単位 V/m (有効値)

損失要素は周波数(図3)と温度に依存します。

法則としていえることは、物質の損失要素が高ければ高いほど、その物質をマイクロ波電界中で加熱しやすくなります。 水および全ての水性物質は高い誘電損失率があり、高い周波数エネルギーを吸収しますが、特にマイクロ波をよく吸収します。 対象物質のマイクロ波照射に対する吸収特性によって、物質を3種類に分類できます。

  • 水(2525°Cで εr’’ = 12 )、水性物質(事実上全ての食料品)、各種プラスチック等の吸収体
  • 陶磁器、水晶ガラス( εr’’ = 0.0023)、テフロン等の透過体
  • 金属や黒鉛等の反射体

誘電損失率が約εr’’ = 0.01であるような物質までならマイクロ波の電界中で加熱できます。 損失率がこの値より低くなれば、対象物質の目標物性が変化しない範囲で、これより高い損失率の添加剤と混合してマイクロ波で処理することができます。

特殊な用途の場合には、個別に最適化処理を行った後であれば加熱された物質の内部に極めて高い電界強度を発生させることができます。

温度に対して対象物質の誘電損失率が過度に変化すると、不規則な加熱となる場合があります。例えば、冷凍物質を解凍するような場合、解凍部分がまだ冷凍されている部分より集中的にマイクロ波を吸収します。

次の例は、式(1)を典型的な入力値で適用した事例です。ここでは日常頻繁に体験されるエネルギー密度の値を示すように設定してあります。水を満たしたフラスコ(水温50 °Cで εr’’ = 5.1)を加熱炉の中に置いて、平均マイクロ波電界強度2 kV/mとします。ここでは、水中の損失電力密度は、2450MHzで約 2800 kW/m3 = 2.8 W/cm3 となります。

従って次の式に従って水が加熱されます。

υ = Ρ'' с Ρ * ρ = 2800 kW / m 3 988 kg / m 3 * 4.18kJ / (kg * K)

加熱炉(ヒートチェンバー)の中の電界強度の分布、即ち、空間座標の関数として表される電界強度は、用いるマイクロ波発生器、マイクロ波の共役部位の品質、数量および配置、炉(チェンバー)の形状、加熱する物質の形状と物理的特性 ( εr’’ ) 、および周囲の金属壁の反射特性に依存します。

R&Dにおいては、数値的手法を用いて電界強度の分布を予測する試みが行われてきました。しかし、電磁波が物質に浸透する際、屈折や回折の現象が発生することから、このトライは困難であることがわかっています。 幾何学的形状により、電力集中が特定の内部領域の体積中(レンズフレア)のほかにも隅や辺で発生するおそれがあります。 これらの各パラメーター(変数)の間の相互関係は複雑であるため、電界の強度分布の計算は単純化された理想的な条件だけでしかできません。従って、マイクロ波加熱設備の加熱炉(ヒートチェンバー)のデザインは今日でも経験と試運転に依存します。